生のものを、火にかけて調理し、食べる。
ヒトの文化は、火を使って料理をはじめたことに始まります。
植物の実や動物の肉体、それに菌類など、自然からの生命の贈り物を、
火を通して変容させ、美味なものとし、人間は生命の糧として生きてきました。
火というエネルギーは、自然の中で育まれた生のものを、人が食べることができるように変えてくれる、魔法のような力。
だから竃(かまど)という場所は、ほんとうに古くから、世界中のあらゆるところで大切に扱われてきたのでした。
この場所を通して生のものが火にかけられたものに変容するということは、竃は、里山がそうであるように、自然の世界とヒトの世界の境界に位置することになります。
だからこそ、竃神(かまどがみ)のような神様が信仰されたり、あるいはシンデレラのような美しいお話が、竃のそばで生まれたのです。
しかし、19世紀から特に20世紀になると、ヒトの世界が自然の世界を圧倒しはじめます。
すると、竃たちは、いつのまにかどこかへ隠れ、退却してしまいました。
家の中の台所にあった、ヒトと自然が交わる重要な場所が、あっという間に消えていった時代。
地球環境の変化と竃の退却は、深いところで関係しているようにも見えます。
その竃が、2008年、滋賀県高島市安曇川泰山寺に戻ってきました。
少ない燃料でも美味しいお米を炊いて、水まで沸かす、すぐれものの竃たちは、久しぶりに燃えています。
竃と、里山と安曇川と琵琶湖、「ソラノネ」のスタッフ、そしてこの地に住んできたヒトたちみんなで、
皆さまの訪問をお待ちしています。